アポリカ!通信 2024年8月:『Never Guinness Up』

 
 夏期講習が始まった。ウェブサイトをリニューアルして、ユウリカでもコラムが書けるようになったので、今月は受験寄りの視点で書いてみたいと思う。

 今年の高校受験クラスには、『アポロン一期生』の子たちが5人いる。入塾した時は、まだ小2だった子達だ。当時はみんな身体も小さくて、英語も初心者だったのに、ずいぶん成長したなぁ、、と思う。私の同級生の子も一人いて、おそらくママが周囲に声を掛けてくれたんだろうと思う(感謝)。兄も一期生で、志望大学に劇的に合格して、今ではキャンパスライフを満喫しているらしい。

 そう言えば先日、元塾生Aくんの保護者の方がときわ台本校に来て下さり、近況を知らせてくれた。英語で授業をする大学に進んだので、その後もずいぶん英語力も伸びて、アイルランドに留学もしたらしい(本場のギネスビール、、、うらやましい)。思い出すなぁ、あの夏を…。

 今から7年前の今頃、初期アポロン(カフェ・ジューディの隣)でも夏期講習の真っ最中だった。当時はほぼワンオペ状態で、教えていたのは英語だけだった。数少ないながらも高校受験生がいて、その中に野球少年の生徒Aがいた。高校でも野球を続けたくて、お母様を中心に都内や埼玉、果ては東北地方まで進学先を探したが、中々決まらない。学習ペースも上がらず、塾も来たり来なかったりで、毎週やきもきとさせてくれたが、、、

 ある日、「小倉監督の元で野球がしたい」とAが言い出した。当時の甲子園の優勝校、日大三高の名物監督だ。強豪の野球部に入るには、学業成績もある程度必要だが、当然野球部のセレクションに参加して、勝ち抜かなければならない。

 参加したいと言っても、彼にも、(当然)私にもコネクションがない。いくら調べて話し合っても、悶々とするばかりで、一向に出口が見えない。もうこうなったら、一か八か、やるしかない。日大三高に電話して、小倉監督に会わせて頂いて、セレクションしてもらおう!と直談判することにした。

 耳元で、呼び出し音が鳴る。窓口の担当者が、電話に出た。「初めまして、板橋区の学習塾ですが、…という理由で、小倉監督とお話がしたいのですが、、」と伝えると、「わかりました。少々お待ちください」と、野球部のグラウンドにいる小倉監督に取り次いでくださるとのこと。え、監督が電話に出るのか?

 「小倉です」 …出た!! 「初めまして、板橋区で(小さな)英語塾を営んでおりまして、うちの(かわいい)受験生が、是非、小倉監督のご指導を受けて、甲子園に行きたいと言っており、、、横に本人もおります」とか言いながらチラッとAを見ると、緊張した面持ちで正座している。「監督、今、本人と変わりますので、少々お待ちください」とAに受話器を手渡す。エッ?!(;゚∇゚)と顔を真っ赤にしながら、巨きな体を大きく揺らして、いや、その、としばらく躊躇していたが、ついに口元に受話器を充てて、話し出した。勇気を振り絞って、自分の想いを、憧れの監督に、自分の言葉で伝えていた。立派だった。

 さすが名監督、そんな彼の純粋な心をしっかりと受け止めてくれて、温かい言葉で労ってくれた。Aは最後に感謝の気持ちを伝えて、電話を切った。いい表情だ。納得感、或いは爽快感のようのものが、Aの心にも広がっていたのかな、と思う。残念ながらセレクションのチャンスはもらえなかったけれど、電話を掛けて良かった。諦めることと、諦めないことを区別できた。その後、他校の野球部との縁があって、次の章が始まることになる。今の彼は、第何章目にいるのだろう。

 翻って、今年の高校受験生。一期生の他にも、中1、中2、さらに今年入ってくれた生徒もいる。現時点で志望校が決まっている生徒は、ほとんどいない。昨年同様、今年も第一志望に全員合格できるだろうか。

 さて、今週も結構頑張ったので、ギネスを飲みにいきます…皆様、今週もお疲れ様でした🍺

 (最近グッときた曲。Joanna Newsom 後半のコーラスがすごい)

  

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