アポリカ!通信 2024年11月:『Season 7 Official Trailer』

 
 アポロンもユウリカも、秋の面談シーズンに入った。夏の成果を伝えると同時に、受験生にとっては受験シーズンの到来、つまり新たなドラマを予告するトレイラーのような意味もある。今月から、しばらく受験生たちの場面を切り取って描いてみようと思う。全員を描くのは難しい点、予めご容赦を…。

 東洋大学の出願受付が始まった。早速、高3受験生Aが「先生、やらかしました。間違えて東洋大学の二部(夜間部)に出願してしまいました… もう受けるしかないですよね」とのたまう。(なんで受けるしか?と思いつつ…)大丈夫、受験者が減るわけではないから、大学は快く変更してくれるはずだよ。交渉してみて、もし難しそうなら、自分が交渉するから早目に相談に来て」と伝える。翌日Aに聞いたら、予想通りあっさりと一部(昼間部)に変更してもらえたとのこと。あのまま二部を受けていたとしたら、、、実績には『※二部』と注釈を書いていただろう(ショウジキ!😊)。

 自習室に植物を増やしてみた。緑に癒されながら、生徒にぐんぐん成長してほしいと願い、小ぶりなガジュマルとパキラを置いて、白い壁面に緑をあしらってみた。しかし一月ほど経って、壁面の植物たちの元気がなくなってきた。スタッフによって水やりの量にバラつきがあったから?かも知れない。理系に詳しい(講師の)ケンスケに解決を促すと、「自習室のライトを使って光合成をさせるとよいのでは」と真顔で言うので、シュールな冗談かと思ったら、ライトの向きを変えて緑を照射し始めた。白い壁に、ほのかなライトの「侘び」と、枯れかけた植物の「寂び」が相まって、せつない…と感じるのは、自分が文系だからだろうか。

 時間に追われる高3女子B。自習室のいつものマイデスクで、今日も頑張ってるかな、、と思いきや、デスクに突っ伏して動かない。仮眠なら、少しは、、と思って見逃していたけど、小一時間経ってもまだスヤスヤと寝ている。やむを得ず声をかけて起こすと、やんわりと腫れた顔に、くっきりと横線が二本ほど走っていた。『枕』にされた教材の復讐だ。いま寝てたよね?と小声で訊くと、目を擦りながら首を横に振る。え、いや、寝てたでしょ?wともう一度訊いても、頑として認めない。受験生の小さなプライドか、反抗期ゆえか、、、いや、単なる寝起きの不機嫌だろう。

 同じ私立高校に通う高3女子のC&D。二人ともよくできる。模試結果もまずまずで、最近は受験生オーラが漲ってきて、志望校合格が現実味を帯びてきた。Cが、「5日連続で受験するかも」と言い出した。しかしDは「(同じ)学校の先生に連続3日までにした方がいい」と言われたらしい。一番行きたいところに照準を合わせて、せめて3~4日くらいにした方がいいんじゃない?と伝えてみる。それより君達、熟語も覚えてくれないとな…。Dが、これから「たくさん過去問を解きたい」と言うので、授業後にコビー機の使い方を教えた。さっきの会話を思い出して、コビー代が高くつきそうな不安が頭をよぎる…。が、ケチな大人はダサいぞ、と自分に言い聞かせて、笑顔で対応。みんなで、がんばろー。

 医学部を目指す既卒生E。毎週火曜日に扱う過去問に、難解な病名が英語で出てくる。意欲旺盛な彼は、そんな単語もよく覚えてくれて感心する。夏までは、英作文で一連のテンプレにこだわり過ぎて、やや不自然な言い回しが多かったが、今は自然な表現に磨きが掛かり、既に『仕上がっている』と言えるレベルまで来た。余談だが、火曜日は医大生のアルバイト講師が出勤する日でもあるので、過去問に出た単語を彼女にクイズして楽しんでいる。先週は、’beriberi’という、アフリカの挨拶か、コンビニの飲料のような語感の英単語が出てきた。この単語の意味=『脚気(かっけ) 』なのだが、医大生でも知らなかった。さらに次の週に同じ単語の意味を訊いても、思い出せない。医大生なのに、なんで覚えないのか?、、、ひょっとして医学の進歩で脚気は根絶して、死語になったのか…?

 高3Fと生徒面談。「自分は時間が掛かるから、最後にして欲しい」と言われ、延長戦確定。営業時間を超えて、結局一時間以上に渡って進路相談に乗った。優しい子で、夏期講習に毎日のように指導していると、地元の推しクッキーを分けてくれたこともあった。サッカーと猫の話をすると、必ず笑顔になる。アメリカに行こうか考えている、と言うので、サッカーならイギリス、しかもチェルシーFCが好きならロンドンに行けばいいのに、と提案するものの、あっさりと空振りに終わる。大学に行ってもサッカーを続けたいらしく、青学も受けるというので、自分の青学の同級生で、バリバリのサッカー部員だった『フクちゃん』の話をしたら、テンションが上がっていた。卒業後は、J1や青学のサッカー部の監督として活躍していたフクちゃん、元気かな。年賀状を交換したり、北区の西が丘サッカー場に応援に行ったり、テストの危機に助けてあげたりしたことを、フクちゃんは覚えているだろうか…。もしかしたら、後輩が増えるかもね。

 公立中3クラス。志望校も徐々に決まって、みんなやる気が出てきた。公立中3は、内申点に関わる最後の定期テストが来週実施される。最近は、東京都の助成金の影響もあり、私立ニーズも増えてきた。スマホのルールをしっかりと決めてからは、みんな勉強時間も増えてきたようだ。講師のアマコは、ガラケーにブライドを持つ稀少種だ。私もスマホやネットの危険性は分かっているつもりだが、ガラケー担当はアマコに任せたい。さて、そんなアマコに、中3受験生の一人が「ガラケーの割合は3%くらいで、先生はその3%に入ってる」と揶揄していた。そう言えば、高2のおしゃれ女子も「アマコ先生って、スマホ持ってないんだよね?! 何が幸せなのって思わない?」と楽しそうに話していた。でも天職を見つけて、毎日スマホに振り回されず生きる、幸せな絶滅危惧種と出会えるのは、うちの生態系の多様性の証左でもあり、魅力でもある🦆。

 もうすぐ冬期講習が始まるので、宣伝のためにチラシの原稿を作って、昨日校了した。春チラシの『受験生の声』に協力してもらった、筋肉ムキムキのGくんを思い出し、近況を知ろうと連絡を取ってみた。彼は第一志望の筑波大学に合格した。模試結果は最後までずっと『E』判定だったのと、国立志望で前期で学部は一つに決めなければいけないのもあり、筋肉の維持と学業の両立で悩んだ時期もあった。文化祭で自作の曲をBGMにボディービルダーとして出場して、その後は完全に勉強にコミットして、コンビニの糖質0サラダチキンで脳内筋肉にたんぱく質を補給して、強靭な精神力とポジティブ思考で、見事志望校に逆転合格した。部活と勉強を楽しんでいるか?と訊いたら、’Of course’ と返事がきた。

 Of course, 自分の担当しない生徒たちにも、様々なドラマがある。忖度しそうにない、哲学者のような高3受験生Hくんに、担当のケンスケ先生はどう?と訊いたら、「いや、もう最高の先生です」と真顔で言ってくれた。目の前で言われたケンスケは照れながら頭を垂れていた。今年は、どんなドラマが待っているだろうか。凡百のフィクションより、よっぽど面白いノンフィクションドラマが…。

今週も頑張りました… 皆様、おつかれ様でした🍺

 (数々の名曲をプロデュースしたクインシー・ジョーンズ氏が亡くなりました。R.I.P.💐🎶)

  

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